宇宙シミュレーション画像 (床展示)

サイエンスプロムナードの床に展示されている緑や黄色の画像は、千葉大学理学部物理学科で行われている「宇宙シミュレーション」の画像です。それは、宇宙における、地上実験で再現するのが困難な物理現象を、コンピュータ上で計算し再現してしまうというものです。ちなみにプロムナードには、宇宙ジェット、生まれたての星のX線放射のシミュレーション結果などについての展示がされています。

 千葉大学理学部宇宙物理学研究室では、宇宙における物理現象のコンピュータシミュレーションが行われています。 

 宇宙現象のコンピュータシミュレーションとは、自然界を表現する方程式をコンピュータ上で解くことで、地上実験では実現することが困難な宇宙の現象を再現することをいいます。このシミュレーションを用いて宇宙現象のメカニズムを明らかにしていくことや、シミュレーション結果をわかりやすく可視化することについて、研究が行われています。 

 床に展示されている画像は、実際の研究において作成されたシミュレーション画像であり、①降着円盤、②宇宙ジェット、③原始星からのX線フレア についてのものです。 


 ①降着円盤とは、物質が回転しながら中心天体に落下する過程でできる、土星の輪のような円盤のことで、銀河の中心やX線連星、星形成領域などのジェットを伴う激しい天体現象の起源になっています。この降着円盤における電離気体の運動をシミュレートすると、磁場が強められて円盤物質の落下を促進し、重力エネルギーが解放されることがわかります。このことから、ブラックホール候補天体で見られるX線放射や、その強度変動はこの降着円盤におけるエネルギー解放によるものであると推測可能なのです。  


 上図は実際の降着円盤の三次元磁気流体シミュレーション画像であり、左列の上段は初期の密度分布(カラー)と磁力線(赤い実線)を、下段は、10回転後の密度分布と磁力線を示します。回転によって発生した磁力線の乱れが確認できます。この乱れた磁場によって回転物質にブレーキがかかって落下し、ドーナツ状の回転トーラスが回転円盤へと進化しています。右列に注目すると、磁気エネルギーが卓越している黄色の領域が形成されていることが確認できます。 


 ②宇宙ジェットとは、激しく活動する天体から高速で噴出するガスなどのことで、「回転するトーラス(ドーナツ型の物体)を磁力線が貫くとき、磁力線に大きな捩れが生じ、それに沿って物質が加速されジェットを形成する」という宇宙ジェット発生の有力なメカニズムをシミュレートした画像が展示されています。

 

 上図は実際の、宇宙ジェット形成の磁気流体シミュレーション画像で、上段は初期状態、下段は2回転後の状態です。
 左列の図では、トーラスの回転により赤い実線で示された磁力線がねじれていることが確認でき、右列の図では磁力線のねじれに伴ってトーラス中央から上下に宇宙ジェットが形成されていることが確認できます。 


 ③原始星では強いX線フレア(X線放出を伴う爆発)が起きていることが宇宙X線観測衛星により発見されました。このX線フレアと宇宙ジェットのメカニズムを同時に説明するモデルとして、原始星と原始惑星系円盤(惑星を作るもとになる回転円盤)を結ぶ磁場が円盤の回転によって捩れて膨張し、磁気エネルギーが解放されて電離物質の温度を100万度以上まで加熱するというシミュレーションモデルが提唱されました。