超臨界流体

物質の温度や圧力を上げていくと、ある点から液体とも気体とも区別がつかない状態になります。この状態の物質を超臨界流体と呼び、これは液体としての性質(溶解性)と気体としての性質(拡散性)を併せ持ちます。サイエンスプロムナードでは超臨界流体を用いて抽出した香り成分を展示しています。  

サイエンスプロムナードでは、超臨界流体についての説明ビデオと、実際に超臨界流体を用いて抽出した香料の展示を行っています。  

CO₂の状態図を見ると、31℃、7.395×10⁶Paの点で液体と気体を分ける線が途切れていることが分かります。この点を臨界点と呼んでいます。全ての物質は固有の臨界点をもち、温度や圧力を臨界点以上にすると気体とも液体とも区別のつかない状態となります。この状態を(臨界点を超えたという意味で)超臨界状態といい、超臨界状態にある物質を超臨界流体と呼びます。超臨界流体は液体としての性質(溶解性)と気体としての性質(拡散性)をあわせもち、液体のように十分高い密度により物質をよく溶かしますが、気体のように粘度(拡散性が良い)が低いため、固体への浸透が速く、抽出する効率が良く、例えば、天然物の細孔中へ容易に入り込み、目的物質を抽出できるなどの優れた特徴があります。この性質を利用して、超臨界流体は物質の抽出や化学反応の溶媒など様々に用いられています。身近な例では、コーヒー豆からカフェインのみを取り除いたカフェインレスコーヒーへの応用などがあります。カフェインはCO₂の超臨界流体だけでなくクロロホルム等にも溶解するのですが、クロロホルムは有毒であり、さらに香りの成分も一緒に抽出してしまうためカフェインレスコーヒーの製造には向きません。超臨界流体ならば、温度と圧力を調整することで目的物質だけを選択的に抽出することが可能なのです。また、高温・高圧の超臨界水は分解活性が非常に高く、ほとんど全ての有機物を即座に完全に分解してしまいます。超臨界流体を用いる分解技術の特徴は、(1)環境に対して負荷の少ない溶媒、とりわけ水を反応溶媒 として用いる、(2)分解速度が大きい、(3)クローズドシステムで分解できるので、副生成物による二次汚染の恐れがないという点です。サイエンスプロムナードでは、超臨界流体を用いて抽出したピーナッツ、ジンジャー、ゴマ、抹茶の香り成分を展示しています。  

参考文献 

一般社団法人 日本分析機器工業会 「超臨界流体クロマトグラフの原理と応用」 

https://www.jaima.or.jp/jp/analytical/basic/chromatograph/lc/ 

東北大学 阿尻研究室 「研究内容」 

https://www.wpi-aimr.tohoku.ac.jp/ajiri_labo/research/index.html 

佐古 猛「超臨界流体技術の基礎 と環境保全への応用」 

https://www.jstage.jst.go.jp/article/senshoshi1960/42/12/42_12_826/_pdf/-char/ja 

高校化学 物質の三態 - Wikibooks 

卜部吉庸 化学の新研究 改訂版 三省堂 2019