ウェーブマシーン

SPにある梯子のような「ウェーブマシーン」。本体をピンと張って持ち手をひねると波が発生します。さらに,捻り方を変えれば,様々な波を起こすことができます。反対側の端に到達した波はどうなるか,2つの波が衝突するとどうなるか,観察してみましょう!  


 ウェーブマシーンをピンと張って持ち手をひねると波が発生し,捻り方を変えることで様々な波を起こすことができます。  


[図1] 波の各要素

 ここで,波の要素について説明します。このウェーブマシーンで起こせる横波(進行方向と垂直に揺れる波)を横から見たときに, 

・波形の最も高い所を 山 

・波形の最も低い所を 谷 

・山の高さあるいは谷の深さを 振幅 

・隣り合う山と山(谷と谷)の間隔を 波長(波1つ分の長さ) 

・波が横に進む速さのことを (波の)速さ 

・ある場所で波が1回振動するのにかかる時間を 周期 

と呼びます。 


それではさまざまな波を起こして観察してみましょう! 


①波ってどんな仕組みで伝わる? 

波が起こっているときの,ウェーブマシーン棒1本1本の動きに注目してみましょう。それぞれの棒は波の進行方向とは垂直な向きに動いているだけで,その動きが隣の棒に順番に伝わっていきます。波は波を伝える物質(媒質)の中を振動が伝わっていく現象のことです。振動している物質はその場に留まったままになります。海の波も同じで,海水が陸の方へ移動しているわけではなく,海水の高さの変化が伝わっています。海水自体はその場で上下運動をしているイメージに近いです。 


②反対側の端に到達した波はどうなる? 

波が反対側に到達すると,波の山は谷となって返ってきます。これは「固定端反射」という現象で,ウェーブマシーンで波を起こすときのように,反対端が固定されている(固定端)の場合に起こる現象です。上向きの波によって端に上向きの力が加わった反作用で,端から波に下向きの力が加わって,下向きの波が生じます。 

 端が自由に振動できる(自由端)の場合は,波の山は山のまま返ってきます。これを「自由端反射」といいます。自由端反射では端で振幅が2倍になるという特徴があります。台風や高潮の時に海辺や堤防に近づいてはいけないのは,波がぶつかったときに自由端反射が起こり,より高い波になる恐れがあるためです。 


③2つの波が衝突するとどうなる? 

 両端をひねって2つの波を起こしてみましょう。2つの波は,ぶつかって合わさったり,打ち消したりせずに,すれ違うように伝わっていきます。これも棒の縦方向の変化が進行方向に順番に伝わるという波の性質によるものです。 


〇地震の波 

波は,進行方向と同じ方向に揺れる「縦波」と,進行方向と垂直に揺れる「横波」の2種類に分類できます。地震が発生すると,震源からは縦波と横波の両方が伝わっていきます。縦波であるP波は横波よりも伝わる速度が速く,初期微動として観測されます。P波という名前は,英語で「第1波」を意味する”Primary wave”から付けられています。その後,横波であるS波が到着し,岩石やマントルの変形が揺れ(主要動)として伝わります。S波という名前は,英語で「第2波」を意味する”Secondary wave”から付けられています。このP波とS波の到着時間の差を利用して「緊急地震速報」が発表されています。ちなみに,このウェーブマシーンで起こすことができるのは,地震のS波(主要動)と同じ「横波」です。 


〇P波(縦波)とS波(横波)の速さの違い 

 波の速度は、「媒質の密度」と「媒質の変形しやすさ」によって速度が決まります。P波が媒質の疎密(体積変化)を伝える波である一方で、S波は媒質の変形(ねじれ)を伝える波であり、疎密は伝えません。これをそれぞれ式で表すと以下のようになります。 


参考文献 

・國友正和ほか(2021)「改訂版 総合物理2 -波・電気と磁気・電子-」数研出版 

・大塚韶三ほか(2018)「ひとりで学べる地学」清水書院 

・強震動の基礎:I-4.2.1|強震観測網K-NET-防災科学技術研究所 

 https://www.kyoshin.bosai.go.jp/kyoshin/gk/publication/1/I-4.2.1.html