不思議な4つの木片

並べ方によって面積が変わってみえる不思議な4つの木片.フィボナッチ数列が関係しています.  

4つの木片の面積をすべて足すといくつになるでしょうか?正方形になるように並べると面積は64に見えますが,長方形になるように並べると面積は65に見えます.皆さんはどちらが正解だと思いますか.

[A] 面積が64に見える並べ方

[B] 面積が65に見える並べ方

正解の面積は,[A]の64です. 

では,なぜ面積が違ってみえるのでしょうか. 

 

[B]のように並べた時,左下の角と右上の角を結ぶ線を境目に,2つの三角形のような形ができることに注目してみましょう. 


[B-2] 長方形の中の2つの三角形

上の図は[B]の並べ方をもっと詳しく見たものです.小さな赤色の三角形の傾きは3/8=0.375となっている一方で,大きな青色の三角形の傾きは5/13=0.3846…となっています.これらの傾きは異なっています.つまり,2つの三角形は相似ではありません. 

 

…となると,長方形に並べた時と正方形に並べた時の差である面積1はどこにあるのでしょうか?  


[B-3] 2つの三角形の傾きの違い

上の図は,[B]の並べ方をさらに拡大したものです.小さな赤色の三角形と大きな青色の三角形にもう一度注目してみると,三角形の傾きが異なるせいで,小さな隙間ができています.この隙間の合計が面積1になっています.これが並べ方が変わると面積が変わって見えるからくりです. 

この不思議な木片は「フィボナッチ数列」に基づいて設計されています. 

不思議な木片の一部の辺の長さは,フィボナッチ数列に基づいて設計されています.ここでは,フィボナッチ数列第4,5,6項目の3,5,8を使いました. 

この式を変形すると,n≥2 のとき,以下のどちらかの式が成り立ちます. 


[A], [B]の並べ方と面積を見返してみると,[A]の面積82=64と[B]の面積65の差は1になっています.上の式の意味にあてはめてみると,「フィボナッチ数列の第5項の8を2乗した数と,その1つ前の3と1つ後ろの8との積との差は1」ということがいえます. 

 

連続する3つの他の項を使っても,面積が1つ変わる不思議な木片を作れます. 


[図] フィボナッチ数列を使った4つの木片の設計(n≥2)

この不思議な木片とフィボナッチ数列との関係を理解していただけたでしょうか.  

フィボナッチ数列を式変形してみよう!!

数学的帰納法により求める.

余談:黄金比

皆さんは「黄金比」という言葉を知っていますか. 

黄金比は,「1:1.618」(1.168 は (1+√5)/2 近似値)の比のことですが,フィボナッチ数列の連続する項の比をとっていくと数字が大きくなるにつれて,徐々に黄金比に近づいていくことが知られています. 

黄金比は「美」の指標として,古くから用いられてきました.皆さんが知っている企業のロゴや,有名な絵画にも使われています.数学は,意外にも私たちの身近なものに関わっているのです. 


参考文献: 

仲田紀夫. ひらめきパズル(上巻). 日科技連出版社, 1981. p166-167 

アルプレヒト・ボイテルスパッヒャー, ベルンハルト・ペトリ著 ; 柳井浩訳. 黄金分割 : 自然と数理と芸術と. 共立出版, 2005. p74-86 

フィボナッチ数列と面積1のパラドックス(’23.2.8閲覧)